止まない雨はないと誰かが言う。
ならば教えてください。
いつになったらこの雨は止むのですか?
どうすればこの雨を止めることができるのですか?
誰か私に教えてください。
ザァァァ
耳に響く雨の音。
脈打つたびに聞こえる心臓の音。
どちらの音も大きく、強く、のもとに伝わる。
それでも、ルキアの声はそれ以上だった。
『友達ごっこは止めにしよう』
の中でこだまする声。
ルキアがそんな言葉を言うなんて思わなかった。ルキアからそんな言葉を聞きたくなんてなかった。
そう思っても、否定しようとしても、もう遅かった。
聞こえてしまった以上、元には戻らない。
受け入れてしまった以上、もう二度と戻れない。
ルキアはさらに続ける。
さよならを伝えるために。ただひたすら別れの言葉を口にする。
それがを傷付けると分かっているのに。いや、分かっているからこそ、ルキアは言う。
「最初から、友達になれるわけが無かったのだ」
「…ルキア」
「私たちはあまりに違いすぎる」
「……私は…」
ルキアの一声一声がの心に突き刺さる。
はそのたびに今まで紡いできた糸を解かれている気がした。
二人を繋ぐ存在が静かに消えていく。
そのたびにの心は悲鳴を上げるのだが、声なき声がルキアに伝わることはない。
それを止めたくて、ルキアに伝えたくて、は叫んだ。
「………私はルキアと友達でいたい!」
「…………」
ようやく止まった言葉。
それなのにの痛みが消えることはなかった。
ルキアは何も言わない。
はルキアを見ようとするが、雨がの邪魔をする。
暗く冷たいカーテンに遮られてしまい、はルキアのことを見ることができない。
黙ったままだったが、ルキアはゆっくり首を横に振り、に言う。
「私は醜い。の友達になる資格は無い」
ルキアはに頭を下げた。
そして、
「………今までありがとう」
最後の糸が断ち切られた。
もうルキアを縛るものは何もない。
自由という名の孤独を手に入れたルキアはゆっくりとから離れていく。
「ルキア!!」
離したくない。離れて欲しくない。
は声の限りルキアの名を呼び手を伸ばす。
だが、ルキアが立ち止まることも、振り返ることもなかった。
ルキアは深い闇の中へと行ってしまった。
ザァァァァ
降り続く冷たい雨はを容赦なく打ち付ける。冷たくなっていく体と心。
ずぶ濡れの死覇装。
水を吸って重くなった布がの身体にぴったりとくっついて離れようとしない。
普通なら不快に思うのだろうが、はなんにも思わなかった。
ただひたすら暗闇の中で声を殺して泣いていた。
雨の雫とともに落ちていく涙。
それは全ての感情。
心という名の器はすぐに容量を超えてしまい零れてしまった気持ちが涙に変わって体内から体外へと出て行く。
それなのに痛みは益すばかり。
悲しい。
苦しい。
目を開けても闇しかない。
目を閉じてももっと暗い世界が広がるだけ。
そんな世界へと行ってしまった人を思うだけ。
手を離してしまった自分自身の弱さを責めるだけ。
『ルキア…』
壊れてしまった何か。それはとルキアを繋いでいた絆。
二人で過ごした思い出、大切な記憶が音を立てて崩れていく。
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