白哉が千本桜を解放しようとした瞬間、が一護と白哉の間に割って入ってきた。
突然現れたに、誰もが驚き戸惑う。
「君は…確か…」
最初に口を開いたのは、浮竹だった。
は後ろを振り返り、にっこり微笑み挨拶する。
「こんにちは。浮竹隊長。お身体のほうはよろしいのですか?」
「ああ…。まだ本調子ではないが、どうも寝ている状況ではないらしくてね」
「そうですね。でも無理はなさらないでくださいね。仙太郎君も清音ちゃんも心配していますよ」
「ああ。気を付けるよ」
次には花太郎のほうを見た。
困惑している花太郎に笑顔で声をかける。
「花君。久しぶりだね」
「さん!どうしてここに…!」
「あっ!駄目だよ!急に動いちゃ!無理しないで休んでて」
そう言うとはもう一度笑った。
次はルキアに。
「ルキアも無理しちゃ駄目だよ。じっとしててね」
「…………」
全部いつもと変わらない会話だった。
さっきまでの緊迫した空気がどこかに行ってしまった。
だが、消えてしまったわけではない。すぐに元に戻ってしまう。
「お前、誰だ?」
警戒心と緊張感を抱いたまま、一護はに尋ねる。
当然だろう。は一護のことを見たことはあるが、一護はない。
二人は会うのは、今回が初めてなのだから。
はニコッと笑いながら一護に挨拶しようとした。
けれど、
「何のつもりだ。」
白哉に阻まれてしまった。
は白哉を見る。笑顔のままで、白哉のことをじっと見つめている。
だが、は白哉の質問に答えない。
白哉は怒りを見せることなく、に言う。
「退け。」
刹那。白哉の霊圧が上がり、を威圧しようとする。
だが、の口から出てきたのは、
「嫌です」
拒否だった。
それを聞いて、白哉は「……何?」と呟いた。
白哉の霊圧はさらに上がる。
だが、それでもの表情が歪むことはない。
は笑顔のままで、白哉のことを見つめている。
「二度は言わぬ」
「私も、同じことを二度言うつもりはありません」
以前、は白哉に言った。
「もしも朽木隊長が私の歩みを阻むのならば、そのときは、全力でお相手させていただきます」
今がそのときだった。
は曼珠沙華の柄を握り締める。
「…ならば仕方無い」
下ろしていた刀を構える白哉。
本気で消そうとしている。も、一護も。
「!一護!逃げ」
「散れ」
白哉は斬魄刀を解放しようとしたが、
ビンッ
できなかった。布のようなものが千本桜に巻きついて、離れない。
またしても、誰かが間に割って入ってきた。
突如現れた人物。それは…。
「貴様は…夜一!!!」
先代隠密機動総司令官及び同第一分隊『刑軍』総括軍団長―――四楓院夜一
「…夜一さん。助けに来てくれたんだろ?サンキューな」
一護は言う。来てくれたことには感謝しているから。
だが、邪魔はしないで欲しかった。
自分は白哉を倒さなければならないのだから。
それを聞いて、夜一はゆっくりと口を開いた。
「…愚か者」
「え…」
一護の視界から、夜一が消えた。そして、
ドン
突然の痛み。見てみると夜一が腹の傷に手を入れている。
一護は、訳が分からないまま、意識を失ってしまう。
殺してはいない。夜一は麻酔系の薬物を直接内臓に叩き込んだのだ。
一護を治すために。そして…。
「治させると思うか」
けれど、白哉はそれを許さない。
さらに白哉は言う。「逃げることはできぬ」と。
は夜一に近寄る。
曼珠沙華を抜こうとした。白哉を足止めしようと思っていた。
だが、夜一はそれを止める。
「おぬしは自分のことに集中しておれ」
「……はい」
夜一にそう言われ、は柄から手を離した。
そして、静かに見守る。
白哉と夜一。神速の戦いを。
「その程度の瞬歩で逃げられると思ったか」
捕えたと。そう思い白哉は刀を振り下ろす。
刹那。夜一は血を流し、崩れるように倒れる。白哉の目にはそう映った。
けれど、
「その程度の瞬歩で捕えられると思うたか?」
夜一は白哉の腕の上にいる。
今まで白哉が見ていたもの。それは、まやかし、だった。
白哉は全く気付かなかった。気付くことができなかった。
今回の鬼事。勝者は夜一だった。
夜一は、一瞬で屋根に移動すると、白哉を見下して言う。
「三日じゃ。三日で此奴をおぬしより強くする。それまで勝手じゃが暫しの休戦とさせてもらうぞ」
夜一の姿が消えていく。捕えるのは、不可能だ。
「追いたくば追ってくるが良い。"瞬神"夜一。まだまだおぬしら如きに捕まりはせぬ」
夜一に逃げられた白哉。
「興味が失せた」と言って、どこかに行ってしまった。
面倒なことは全て浮竹に押し付けて…。
呆れてため息しか出ない浮竹。すると、
ドサッ
「ル…ルキアさんっ…!?」
ルキアが気を失ってしまった。
白哉がいなくなって、張り詰めていた糸が切れてしまったようだ。
「もう呼んでも大丈夫だと思いますよ?」
「そうだな」
にそう言われた。自分でもそう思っていたところだった。
浮竹は大きく息を吸い、二人を呼ぶ。
「お―――い!仙太郎!清音!!出てきてくれ―――っ!」
すると、
「「お呼びでありますか。隊長!!」」
浮竹のところに十三番隊第三席・小椿仙太郎と同じく第三席・虎徹清音がやってきた。
二人共、浮竹の後をついてきていたらしい。しかも、仙太郎の話を聞けば最初から近くに居たらしい。
「危ないからついてくるな」と言われていたのに。
それも全て、浮竹に尊敬の念を抱いているがゆえの行動だった。
そして、二人の気持ちはさらにヒートアップしていく。
そんな二人を見ながら、『相変わらずだなぁ』と思うだった。
浮竹は、仙太郎にはルキアを牢の中に入れるよう、清音には四番隊に連絡して上級救護班を出してもらうよう、それぞれ指示をする。
浮竹の指示に従う二人。
その場には浮竹とと花太郎の三人だけが残った。
そして、は浮竹の口から信じられない言葉を聞いた。
「えっ?藍染隊長が…亡くなった……?」
「…ああ。犯人及び動機は分からない。今朝、雛森副隊長が藍染の遺体を東大聖壁で発見したらしい」
「桃ちゃんが…」
「だが、あの藍染を殺すなんて相当腕が立つ人物に間違いない」
「……浮竹隊長。申し訳ありませんが、これで失礼いたします」
は浮竹にお辞儀をして、早々にその場から立ち去った。
向かう先は、今、夜一がいる場所。
夜一に聞かなければならないことがある。
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