3.出会い




その日は私にとって忘れられない一日になった。



それから数日後のことだった。
十番隊隊舎で集会が行われた。新しい隊長との顔合わせだった。
を含む全ての十番隊隊士が静かに待つ。
そんな中、一人の少年が現れた。
銀髪碧眼の少年。彼は、隊長のみが着ることを許された、純白の羽織を身にまとっている。

「このたび十番隊隊長に就任した日番谷冬獅郎だ」

声が響く。透き通るような声だった。
はまっすぐ日番谷を見つめていた。目をそらしたくなかった。

「これからよろしく頼む」
「はい!!」
「今日の集会はこれでおしまい。席官はここに残り、それ以外は各自執務室で今日の業務を始めること」

十番隊副隊長・松本乱菊に言われ、席官以外の隊士はそれぞれ執務室へ戻っていく。
はその場に残った。
広い空間に席官数十人と乱菊、日番谷が残っている。
耳が痛くなるほど静かだった。

「これで全員か?」
「はい。全員です」
「そうか」

乱菊に全員いることを確認した後、日番谷は席官へと視線を向けた。
そして。

「俺はお前たちのことを何も分からない。だから、お前たちの実力を知りたいと思う」

日番谷の言葉に、周りはざわめきだす。自身、動揺を隠せない。
日番谷は何をしようとしているのか。
全員に緊張が走る。

「これからここにいる全員、俺の下につき、事務処理から虚退治、全てを見せてもらう。そして、お前たちの実力を判断した上で改めて席官を決める」
「その結果によっては昇進するということですか?」

隊士の一人が日番谷に尋ねる。日番谷は頷き、さらに言う。

「その逆もあるがな。それはお前たち次第だ」


『お前たち次第だ』


日番谷の言葉がこの場にいる全員に闘争心を芽生えさせた。
最後に、日番谷は全員に言う。

「じゃ、全員頑張れよ。松本、あとは頼む」
「はい。分かりました」

日番谷は乱菊に任せて執務室へ向かう。
はそんな日番谷を見ていた。日番谷の背中がとても大きく見えた。

「じゃ、順番を抽選で決めるから並んでー」

乱菊の声が聞こえて、はっとしたようには後ろを振り返った。
抽選場所にはすでにたくさんの隊士が並んでいる。
は完全に出遅れてしまったようだ。

「まぁ、いいか。のんびり待とう」

小さく呟くと、は最後尾に並び、順番を待った。
周りからは様々な声が聞こえる。
そのたびには鼓動が早くなるのが分かった。一歩一歩、前へ進んでいく。

「あなたで最後?」
「はい」
「ね、私が引いてもいい?みんながやるのを見てたらなんだか自分もやりたくなっちゃって」
「構いませんよ。どうぞ」
「ありがと!」

乱菊は抽選箱に手を入れ、引き抜く。その紙には『一番』と書いてあった。

「一番よ!大当たり!さっすが私!!」

感激のあまり、乱菊はをぎゅーっと抱きしめた。
は身長が小さいため、乱菊の胸に埋まってしまった。
窒息死する寸前、乱菊はを解放する。
自由の身になったは、何度も息を吸っては吐いて、不足した酸素を全身に送った。

「あなた、名前は?」
です」
ね!早速執務室に行きましょ!残りは各自執務室に戻るように」

乱菊との二人は隊長・副隊長用の執務室へ向かった。
その間、はずっと緊張していた。
憧れの乱菊が目の前にいるのだから無理もない。


「は、はい!」
「そんなに緊張しないで。気楽に行きましょう」
「無理ですよ…」
「これから慣れていけばいいわ。私のことは乱菊さんって呼んでね!」
「はぁ…。努力します……」

二人は執務室の前へとやってきた。中に入る前に乱菊はに一言、言う。
。頑張ってね?」
「はい!頑張ります!」

日番谷の判断によってが席官を続けられるか決まる。
『頑張ろう!』と自分自身に気合を入れた。

「よし!じゃ、入るわよ!」
「はい!」

乱菊は扉を数回叩き、中にいる日番谷に言う。

「失礼します。席官を連れてまいりました」
「入れ」

日番谷から了承を得たので、乱菊は執務室の扉を開けて中へ入る。も乱菊の後に続いた。

「失礼します。十番隊十席です」

深く頭を下げて、はまず自己紹介をする。そして、ゆっくりと頭を上げた。
すると、の視界は真っ白に染まった。それらは全て書類だった。
執務室は書類の山で埋め尽くされていた。
ふと、は乱菊の言葉を思い出した。『頑張ってね?』はこのことだったのか、と。
絶対にそうだと確信するだった。
日番谷はに言う。

「来たばかりで悪いが、さっそく頼む」
「はい!こちらこそ、よろしくお願いします!」

は仕事を開始した。
手前の書類から順々にさばいていく。書類を一枚一枚確かめ、的確に処理する。
あっという間に処理済の書類が増えていった。
日番谷も自分の仕事をしながらの仕事を見ていた。
そのとき、日番谷が笑みを浮かべていたことは、見られている当人は全く気付かなかった。







  


日番谷隊長の登場です!(嬉)
これから隊長にはバシバシ登場してもらうので、お楽しみに!(私も楽しみです!) (08.03.05)

[戻]