ルキアと再会を果たした。
あの後、ルキアは一言も話さなかったけれど、それでもは嬉しかった。
ルキアに会えた。それだけで十分だった。
それから数日後、は再び六番隊隊舎へとやってきた。
今回はルキアではなく、恋次に会いに来たのだった。
「失礼します。十番隊第三席です」
「入れ」
「失礼します」
執務室に入ると、白哉が仕事をしていた。
白哉は少し顔を上げを見た後、また書類へと視線を落とす。
そして、白哉はに尋ねた。
「何の用だ」
「今回は阿散井副隊長に用があり、参りました」
「恋次は席を外している」
「そのようですね。こちらで待たせていただいてもよろしいですか?」
「好きにしろ」
「ありがとうございます」
は丁寧にお辞儀をし、白哉に近寄った。
黙々と仕事する白哉とその書類を見ると、は小さくため息をついた。
そして、笑みを浮かべて白哉に言う。
「少し休憩されてはいかがですか?」
「構わぬ」
「…今、処理している書類ですが、間違えていますよ。一行目から誤字脱字ばかりです」
「……………」
ようやく白哉の手が止まった。
書類をよく見てみたら、の言うとおり、間違いだらけだった。
白哉は大きなため息をつき、のほうを見た。
は表情を崩すことなく、笑顔のままで白哉を見つめていた。
そんなに白哉は言う。
「少し休む」
「はい。それでは、お茶を入れてまいります」
そう言うと、は給湯室へと向かった。
白哉と自分。二人分のお茶と一人分のお菓子を手際よく用意し、執務室へと戻ってくる。
そして、白哉の机に置き、にっこりと笑った。
「どうぞ」
「ありがとう」
白哉はに礼を言い、熱いお茶を飲んだ。
その様子をは静かに見つめているが、
「……………」
相変わらず白哉は何も言わない。
だが、白哉はゆっくり息を吐いた。
それを耳にした途端、は嬉しそうに笑った。それは『美味しい』という合図だから。
はようやく安心して、自分のお茶を飲んだ。
とても上品で、とても飲みやすい味。
次第に心が休まっていく。
それから、と白哉の間に特に会話はなかった。
それはいつもと変わりない。
けれど、いつもとは雰囲気が違った。
重苦しい上に、刃のように鋭い何かが全身を突き刺している感じがする。
は特に変わりない。いつものように過ごしている。
ということは、今のこの雰囲気は白哉が作っていることになる。
『いったい何故?』
がそう思ったときだった。
「何故、兄は私を責めないのだ」
突然、白哉がにそう尋ねてきた。
はじめ、は質問の意味が理解できなかった。
『どうして私が朽木隊長を責めなければいけないのだろう?』と思っていた。
の脳裏にルキアの顔が浮かぶまでは。
『ルキアの処刑を止めようともしない自分を、どうして責めないのだ』
ようやく白哉が言いたいことが分かった。
はかなり呆れてしまい、特大のため息をついた。
馬鹿馬鹿しいとさえ思う。腹立だしいと本気で思う。
けれど、それらと同じくらい、『本当に不器用な人だ』と思った。
自分の思いを伝えられず、自分の心のままに生きられず、何かに囚われているように見える。
そんな白哉を責めることなんて、にはできなかった。
「誰でも自分が信じる道を進んでいます。それを否定することは誰にもできません。だから、私は朽木隊長を責めません」
「そうか…」
「ですが、もしも朽木隊長が私の歩みを阻むのならば、そのときは、全力でお相手させていただきます」
進みたい道。進むべき道。
誰かの道とぶつかってしまったら、どちらかが諦めなければいけない場合もある。
はきっと諦めることはできない。自分の歩みを止めることはできない。
ゆえに、もしもこの先、自分の進もうとしている道を誰かが阻んだら、はどんなことをしても進むだろう。
たとえそれが大好きな人だとしても、自分が信じる道を歩み続けるだろう。
戻
進