「…何て…?朽木隊長…どういう…」
「聞いた通りだ。何度も言わせるな。
『第一級重禍罪朽木ルキアを極囚とし―――これより二十五日の後に真央刑庭に於いて極刑に処す』
それが尸魂界の最終決定だ」
聞こえてきた恋次と白哉の声。
は自分の胸がぎゅっと掴んだ。
心が痛い。また泣きそうになっていく。
泣いても仕方がないと分かっていても、自分の気持ちに嘘はつけない。
が泣かないように我慢しようとした、ちょうどそのときだった。
「……………」
「朽木…隊長…」
隊舎牢から白哉が出てきた。
少し驚いた顔をして、それでもすぐにいつもの難しそうな表情に戻って、を見た。
は笑うことができず、黙ったまま白哉のことを見つめていた。
長い長い沈黙。
先に口を開いたのは、白哉だった。
「すまぬ」
「………っ!」
そう言うと、白哉はどこかに行ってしまった。
は目で追いかけることもしなかった。
ドンッ
壁に寄りかかり、ずるずると背中を擦りながら腰を下ろす。
そして、体を小さくすると、は泣いた。
ただ一言。『すまぬ』と言った白哉。
それが何に対しての謝罪なのか、には分からない。
それなのに、何一つ分からないのに、涙が流れた。
今までずっと堪えてきた涙が、の頬を伝い落ちていく。
「さん!どうしたんすか!?」
暗闇の中、誰かの声が聞こえた。
顔を上げようと思ったが、にはまず確かめなければならないことがあった。
涙は止まっているか、ちゃんと笑えるか、自分は大丈夫か。
一つ一つ確認した後、はゆっくり顔を上げた。
の目に映ったのは、困惑の色を顔の全面に出した恋次だった。
は立ち上がると、自分よりも背の高い恋次を見上げながら笑った。
「恋次君、久しぶりだね」
「久しぶり…っすか?」
「久しぶりだよ。元気にしてた?」
「元気っすよ。一応…」
「そっか。それはよかった」
いつもと同じ、何気ない会話。
も恋次も普通に話をしているが、言葉に気持ちがこもっていない。
どちらもルキアのことで頭がいっぱいで、それどころじゃないせいだった。
「で、何でさんはここにいるんすか?まだ仕事中っすよね?」
「会いに来たの。ルキアに」
「ルキアに?」
は笑顔のまま、恋次に言った。
「朽木ルキアと面会してもよろしいですか?阿散井副隊長」
恋次から許可を得て、は牢へと足を踏み入れた。
ルキアは椅子に座っていた。
静かに窓の外を見上げて、何を思っているのだろうか。
中央四十六室が裁定を聞いて、何を考えているのだろうか。
そんなことを考えながらはゆっくりと歩を進めた。
久しぶりのルキア。目の前にルキアがいる。
そう考えただけでまた泣きそうになってしまう。
すると、誰かがいることに気付いたらしい。
外をじっと見つめたまま、振り返ることなく、ルキアは言う。
「何だ、恋次。おもしろイレズミマユ毛をまた見せに来たのか?」
「確かにおもしろイレズミマユ毛だよね。おしゃれのつもりなのかな?」
「…………っ!?」
後ろにいるのが恋次ではないと知り、ルキアは慌てて振り返った。
そして、とルキアはようやく再会を果たすことができた。
「…」
絞り出すようにの名を呼ぶルキア。
『ルキアが名前を呼んでくれた』
それだけですごく嬉しくて、は笑みを浮かべてルキアに話しかける。
「久しぶりだね。ルキア。三十年ぶり…かな?」
「…何故……」
「会いに来た。ルキアに会いたかったから。ルキアに会わなきゃ絶対後悔すると思ったから」
「……………」
「いまさら会いに来てごめん。それと、今まで会いに来れなくてごめん」
ルキアに、自分自身に、ごめんと言う。
ルキアが会いに来るまで待つと言ったけれど、逃げていただけなのだ。
本当は、自分から会いに行かなければいけなかったのだ。
たとえルキアがそれを望まなくても。たとえルキアに拒まれたとしても。
自分の気持ちに素直になれば、自分の思いを伝えれば、それでよかったのだ。
今のはそう思っている。そう思えるようになった。
だから、今、はここにいる。ルキアの目の前に立っていられる。
戻
進