11.警告(前編)




十三番隊隊士・朽木ルキアの失踪から数日が経とうとしている。
けれど、彼女の行方は未だ分かっていない。
隠密機動が捜索を行っているが、手がかりすら見つかっていない。
それでも護廷十三隊はいつもと変わりなく機能していた。
当然といえば当然なのだろう。
隊士の一人がいなくても支障がないのだから。

『もしも私がいなくなったとしても、世界は変わらず動き続けるだろうな』

はそう感じずにはいられない。
それでもは信じていた。
ルキアは必ず生きていると。心の中で強く、強く。


「お邪魔しまーす!」

執務室に雛森の元気な声が響いた。
日番谷は顔を上げることなく仕事をしている。
そんな日番谷の代わりに、は仕事していた手を止めて、雛森を笑顔で迎えた。

「こんにちは。雛森副隊長」
「もう!先輩!桃って呼んでくださいよ!」
「でも、今は仕事中だから」
「むー!」


「いい加減にしろ!雛森!仕事の邪魔すんな!」


ずっと黙っていた日番谷だが、このままでは二人の会話がずっと続くと判断し、強制終了させた。
けれど、それと同時に雛森の標的はから日番谷へと移ってしまった。

「日番谷君こそ邪魔しないでよ!私は先輩と話をしてるんだから!」
「…お前、ヒトの話を聞いてねえだろ。俺は『俺たちの仕事の邪魔すんな』って言ってんだ。用がないならさっさと帰れ」
「用ならあるもん!」
「何ですか?」

がそう尋ねると、雛森は日番谷からのほうを見て、にっこり笑って言う。

「今日は藍染隊長が斬魄刀の解放するところを各隊の副隊長に見せるんです!私はお迎えに来ました!」
「藍染隊長が?」
「はい!私、藍染隊長が斬魄刀を解放するところを見るのは初めてなんです!だからすっごく楽しみで!」

雛森は頬を赤く染めて、とても嬉しそうに笑っている。
そんな雛森を見つめながらの心は少し複雑な気持ちだった。
その気持ちを言葉にすることはできなかったけれど。

「ただいまー!」

書類を届けに行っていた乱菊が執務室に戻ってきた。
乱菊を見てほんの少しホッとしたは、笑顔を見せた。

「乱菊さん、お帰りなさい」
「ただいま。
「乱菊さん!迎えに来ました!」
「ありがと、雛森。じゃ、さっそく行きますか!」

「行ってらっしゃい」とは言おうとした。
けれど。


も一緒に行くわよ!」
先輩も一緒に行きましょう!」


乱菊と雛森、両方からそう言われた。二人とも満面の笑みを浮かべている。
は苦笑いを浮かべることしかできなかったが。

「私は副隊長ではありませんから」
「そんなの関係ないわよ!」
「そうですよ!『時間があるなら副隊長以外の隊士も来てほしい』って藍染隊長も言ってましたし!」
「でも、仕事が…」

まだたくさんの仕事が残っている。
乱菊とがいなくなったら仕事をするのは日番谷一人になってしまう。
日番谷のほうを見る
助けを求めているのだが、日番谷はを見た後、小さくため息をつき、言った。

「行ってこい」
「ですが……」
「隊長格が斬魄刀を解放するところを見れる機会はなかなかねえ。お前はずっと休憩なしで仕事してたし、行ってこい」
「……………」
「心配すんな。ここは大丈夫だ」

『隊長が行けと言うのなら従わなければ』

そう思いながら、そう自分に言い聞かせながら、は日番谷に小さく笑ってみせた。
静かに席を立ち、日番谷にお辞儀をして、言う。

「ありがとうございます。日番谷隊長。お言葉に甘えて行ってまいります」
「おう」
「じゃ、隊長!行ってきますね!」

、乱菊、雛森の三人は執務室から出て行った。
途端に静かになる執務室。
一人残された日番谷は大きなため息をついた。







  



藍染隊長が斬魄刀を解放するところを見に行くことになったヒロインさん。
見てしまったら大変なことになるんですけど、どうなるのかは後編に続きます。 (08.09.18)

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