変わったことがある。
変わらないものもある。
どちらも大切だから守りたい。
は誰もいない修練場で稽古をしていた。
それが一通り終える頃には汗だくなるの身体。
修練場の外にある水道の蛇口をひねり冷たい水を出し、それを頭からかぶり汗を流した。
朝の日差しが大地を明るく照らしていく。
その光を全身に浴び、は目を閉じて深く息を吸う。
清らかな生気がの体内を清めていくのが分かった。
ゆっくりと目を開けるとは笑みを浮かべ、元気に動き出した。
「おはようございます」
執務室へとやってくると、はまず朝の挨拶をする。
無人の部屋から返事が返ってくることはないのだが。
こんな朝早くに執務室に行っても誰もいないのだから挨拶する必要はない。
分かっているが、それでもは誰よりも早く来て、誰もいなくても挨拶をした。
自分自身に「今日も一日頑張ろう」と言い聞かせるように。
「よし!始めますか!」
そう言うと、は書類の整理を始めた。
机の上にある書類を処理済みと未処理に分け、処理済みの書類は提出箱に入れる。
未処理の書類は提出期限が早い順に並べて、日番谷や乱菊、自分の机に置いた。
すると、
「!いる?」
突然、一人の女性死神が執務室に入ってきた。
それは十三番隊第三席虎徹清音だった。
は清音に微笑み、挨拶する。
「おはよう。清音ちゃん」
「おはよ!!悪いんだけど、またお願いしてもいい?」
そう言って清音は持ってきた物・大量の書類を見せた。
それを見たは、微笑みが苦笑いに変わり、小さくため息をついた。
「…期限は?」
「……三日前に過ぎてるの。お願い!」
「…浮竹隊長の具合は?」
「……具合が悪くて、ずっと寝込んでる」
「…分かりました。書類は私がやります。日番谷隊長に事情を説明して捺印してもらって提出するから」
は清音から書類を受け取り、もう一度笑った。
清音はそんなを見つめながら言う。
「朽木さんは元気だよ」
「…そう。よかった」
とルキアが友達だったことを知る者は少ない。
あの日からがルキアの友達に戻りたいと願っていることを知る者も。
清音はその両方を知る数少ない者だ。
だから、に会いに来るときは必ずルキアのことを教えてくれる。
は清音の気持ちがとても嬉しかった。
「ありがとう。清音ちゃん」
「こちらこそありがとね!お礼に今度何かおごるから!」
清音はに笑うと、元気に十三番隊隊舎へ戻っていった。
そんな清音を見送りながら、は一息ついた。
ため息にも似ているそれがどんな気持ちから出てきたのか、自身もよく分からなかった。
今、自分の心にある感情が何なのか上手く言葉に表すことができず、はふと空を見上げる。
空の青と雲の白がとても綺麗で、は少しの間じっと見つめていた。
それからまもなくして日番谷が執務室にやってきた。
まだ少し眠そうな日番谷には笑顔で挨拶する。
「おはようございます」
「おう」
日番谷はそれだけ言って自分の席に着く。
まず机の書類を見て、次にを見た。
ほんの少し笑みを浮かべながら日番谷はに言う。
「いつもありがとな」
「いいえ。私はこんなことしかできませんから」
「そんなことはない。お前がいるから十番隊は成り立ってる。もっと自信を持て」
「…ありがとうございます。これからも頑張ります!」
日番谷の言葉が嬉しかった。
『私はここにいてもいいんだ』と。
『ここが私の居場所なんだ』と。
心からそう思うことができた。
日番谷に三席を任じられたとき、は自分のできることを一生懸命やろうと自分自身に決めた。
日番谷に「俺がお前を護る」と言われたとき、は「私はあなたのそばにいる」と自分自身に誓った。
これからもこの場所にいたい。
これからもずっと、この場所に。
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