合同任務当日。
四大瀞霊門・南門の前にと恋次、十一番隊第三席斑目一角の姿があった。
は恋次に向かってにっこりと微笑むが、恋次はそれが恐ろしくてしょうがない。
この前、執務室で目にしたの笑顔が頭から離れないせいだった。
そんな恋次を心配し、一角が声を掛けてきた。
「どうした?腹でも壊したか?」
「…いえ、なんでもないっす」
「お前、久しぶりの任務だろ?もっと楽しめよ!」
「……頑張ります」
いつもと様子が違う恋次に首を傾げる一角だったが、深く尋ねようとはしない。
その代わりに「気合入れろ!」と恋次の背中を思いっきり叩いた。
はそんな二人を見守った後、スッと近寄り話しかけた。
「これからのことを確認してもよろしいでしょうか?」
「おう。勝手にしろ」
「これから私たちは南流魂街七十八地区"戌吊"へ向かいます。霊波計測研究科の報告によれば、
虚が多数確認されているとのこと。今回、私たちの任務は全ての虚を退治することです」
「虚が多数か。おもしれえ!」
一角の瞳がキラッと輝くのをは見逃さなかった。
会うのは初めてだが、『戦いを心から楽しむ者の瞳だ』と、そう心の中で思った。
「"戌吊"か…」
"戌吊"と聞き、それを口にした途端、恋次の表情が曇った。
それを見たは恋次が"戌吊"出身であることを思い出した。
『「合同任務に参加しろ」と言わなければよかったかもしれない』
今になって後悔した。いまさら後悔しても遅いと分かっていても…。
それでも、
『公事と私事を混同するな』
そう自分に言い聞かせ、は一角と恋次に言った。
「では、参りましょう」
「行くぜ!恋次!足引っ張るんじゃねえぞ!」
「はい!一角さん!」
三人は南流魂街七十八地区"戌吊"へ向かった。
たちが目的の場所に着いたとき、そこは地獄のようだった。
大量の虚に溢れ、それらは皆、獰猛な眼でたちのことを見ている。
「…すごいですね」
「楽しいじゃねえか!」
先陣を切ったのは一角だった。
斬魄刀・鬼灯丸を抜くと、その切っ先を虚へと向け、虚に飛び掛っていった。
刀を振り下ろし、手当たり次第に虚を倒していく。
「吠えろ!蛇尾丸!」
恋次は斬魄刀・蛇尾丸を解放する。
七枚の刃節に分かれた刀身が伸び、虚を切り裂いていく。
それを見て、は小さく微笑んだ。
『学生の頃よりも強くなっている。もっと強くなろうとしている』
それがよく分かった。それでもう十分だった。
「さて。私もお仕事しましょうか!曼珠沙華!」
斬魄刀・曼珠沙華を抜刀し、虚へと向かった。
地獄のような光景は灼熱の戦場へと姿を変えた。
きらめく刀身。
虚の赤い血が曼珠沙華を、の身体を濡らしていく。
「……あと少し、かな」
そう呟きながらは状況を把握し、これからの行動を考えていた。
ここにいる虚を全て倒したら一角と恋次を探し、周囲に虚がいないかを確認すれば今回の任務は終わりだろう。
虚はだいぶ減った。あと残りは数える程度。
は斬魄刀に霊圧を注ぎ、それを解放した。
「咲き乱れ。曼珠沙華」
虚の体に紅い花が咲いていき、そして…。
ドーン
それらを一気に爆発させた。
爆発の影響で周りが見えなくなるが、ちょうど吹いた風が煙を飛ばしていく。
全ての煙が吹き飛ばされたとき、虚はどこにもいなかった。
は刀を鞘に納め、一角と恋次を探した。
けれど、二人の姿はどこにも見当たらなかった。
『どこまで遠くに行ってしまったのだろう』と少し呆れてしまったが、は二人の霊圧を探した。
すると、
「あれ?」
二人の霊圧はのすぐ近くにあった。
もう一度辺りを見回すが、二人の姿はどこにもない。
「どういうこと?」
「教えてあげようか?」
突然の声。
それはの後ろから響いた。
が刀の柄を握り締めて振り返ると、そこにいたのは小さな子供だった。
ニコニコと笑いながらのことを見つめている。
だが、は柄から手を離そうとしない。
警戒を解くことなく、まるで睨みつけるように子供をじっと見ている。
「へー。子供を疑うんだー?」
「確かに君は子供に見えるし、霊圧も感じない。でも、君はすごく怪しい気がする」
それを聞いた途端、子供の姿がぐにゃりと歪んだ。
よりも小さかったその体は膨れるように大きくなり、可愛らしかったその姿は醜悪な虚へと変えた。
「それが君の本当の姿?」
「そうだ。さぁ、はじめようか」
「その前に聞きたいことがある。斑目三席と恋次君はどこ?」
「ああ。あの馬鹿共ならそこにいる」
は虚が指差す方向を見る。
そこには地にひれ伏す恋次の姿があった。
「恋次君!」
すぐに恋次のところへ行こうとするだったが、それは叶わなかった。
反対方向からの攻撃によって。
即座に反応し刀で受けるだったが、その相手を見て驚愕してしまった。
何故なら、に攻撃してきた相手とは、
「けっ。外しちまったか」
十一番隊第三席斑目一角だったのだから。
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