「暑いわねー」
「暑いですねー」
「仕事したくないわねー」
「仕事したくないですねー」
「そんなこと言ってる暇あるなら仕事しろ!」
夏真っ盛り。
ほぼ毎日三十度を越える最高気温。
それなのに仕事をしろと言うなんて…。
「隊長の鬼!」
「私たちを殺す気ですか!」
「つべこべ言わずに仕事しろ!ただでさえ暑いのに大声出させるな!!」
十番隊隊長日番谷冬獅郎。
史上最年少で隊長に就任した神童であり、氷雪系最強の斬魄刀・氷輪丸を持つことで有名。
それに加えて、暑さに弱いことでも知られている。
「この暑さじゃ仕事できませーん。なんとかしてくださいよー」
「右に同じでーす。氷輪丸ならできますよねー」
「……そうだな。お前らを凍らせてやることはできるな」
日番谷がそんな恐ろしい言葉を口にした、ちょうどそのとき。
「!」
桜色の髪の可愛い女の子がやってきた。しかも、窓から。
十一番隊副隊長・草鹿やちるだ。
暑さ防止のためか、額に白いはちまきをぎゅっと縛っている。
まるで運動会に参加する小学生のようだが、誰もそのことには触れなかった。
「やちるちゃん、どうしたの?何か用事?」
「あのねー、じぃじからに渡してくれって頼まれたのー」
そう言うとやちるはに書状を渡した。
はやちるから受け取ったそれを開き、さっと目を通す。
それが読み終わるとき、は嬉しそうに笑みを浮かべていた。
「ありがと。やちるちゃん」
「どういたしましてー。お礼はお菓子でいいよー」
「じゃ、カキ氷でも食べていかない?」
「カキ氷!食べたーい!!」
カキ氷と聞いた途端、やちるはぴょんぴょん飛び跳ねて喜んだ。
そんなやちるを見つめた後、はくるりと振り返り日番谷に言った。
「そういうことで、隊長!氷輪丸で氷を出してください!」
「ふざけんな!誰が出すか!」
「一番隊隊長・護廷十三隊総隊長山本元柳斎重國様のご命令ですよ?」
「はぁ?」
「ほら」
は先程の書状を広げて日番谷に見せた。
すると、そこには達筆な字で
『氷菓子製作のため十番隊隊長日番谷冬獅郎の斬魄刀解放を許可する。なお作った氷菓子をワシのところに持ってくること』
と書いてある。
それを見た途端、日番谷の眉間に皺が深々と刻まれた。
だが、は満面の笑みを浮かべて日番谷に言う。
「よろしくお願いしまーす!」
「霜天に坐せ!氷輪丸!!」
その後、日番谷が出した氷でたくさんのカキ氷が作られた。
そのカキ氷は十番隊隊士をはじめ、噂を聞きつけてやってきた他隊の隊士たち全員に配られた。
その日以降、十番隊ではカキ氷やアイスなどの氷菓子が配られ、十番隊隊舎は護廷十三隊の憩いの場となった。