考えるよりも先に体が動いていた。ただそれだけ。
ちゃんとした理由がほしいというのなら、こう言おう。
『放っておくことなんてできなかった』と。
はたまに見かけるひとりの死神のことが気になっていた。
その死神の名前は朽木ルキア。
噂は耳にしていた。『朽木家の飼い猫』『大貴族の道楽』と。
いろんな噂を周囲から聞かされていた。
だが、自身、そんな噂に興味は無かった。
興味があるのは、どんな人物なのか。それだけだ。
ある日、それを確かめることにした。
昼休み。一人でボーっとしているルキアには話しかけた。
「こんにちは!」
笑顔で元気に挨拶する。ルキアは驚いた顔でのことを見ていた。
突然、見知らぬ者に声を掛けられたのだから当然だろう。
『さて。どうするだろうか』
はルキアの反応を待つ。
「……こんにちは」
ルキアは、驚きながらも、に応えた。はますます笑顔になる。
「隣、座ってもいい?」
「ああ。構わないが…」
「ありがと!」
はルキアのすぐ隣に座った。相変わらず満面の笑顔をルキアに向けている。
それに対してルキアは戸惑うばかりだった。
「私は!十番隊だよ!」
「私は…朽木ルキアだ。十三番隊に所属している」
「ルキアか!いい名前だね!」
ルキアは本当に驚いていた。
自分の名前を聞いても、四大貴族である『朽木』という名を聞いても、動じることがない。
貴族としてではなく、一個人としてルキアのことを見ている。
の、絶えることのない温かく優しい微笑みが、ルキアの心の扉を開けた。
ルキアは小さく笑みを浮かべた。
「良かった」
「えっ?」
「実はね、すごく心配だったんだ。いきなり声を掛けられて、警戒されてるかもって。でも、今、笑ってくれたよね?」
にそう言われ、ルキアはなんだか急に恥ずかしくなった。
顔を背けられてしまったが、は笑った。
「私、あなたと友達になりたい」
「……友達?」
の言葉に、ルキアは戸惑いを隠せない。どうすればいいか、分からなくなってしまった。
は優しく微笑み、もう一度ルキアに言う。
「私はあなたのことが知りたい。もっともっと知りたい。もし良かったら、私と友達になってくれませんか?」
そう言って、はルキアに手を差し伸べた。
ルキアは何も言わずにをじっと見つめている。
は、とても真剣に自分のことを見ている。そんなの綺麗な瞳に、惹かれた。
「私もおぬしのことが知りたい。……友達になりたい」
ルキアはの手を握った。は嬉しそうに笑った。
進