一護たちが現世に戻ってから一週間後。
ようやく退院することができたのところに、総隊長の使いで一番隊隊士がやってきた。
伝言は一言、"今すぐ一番隊隊舎・隊首会場に来るように"だった。
総隊長からの突然の呼び出し。その理由は、ひとつしか考えられない。
表情が固くなっていくを見た日番谷は自分も同席すると申し出た。
けれど、伝言役の一番隊隊士は「一人で来るように、とのお達しです」とだけ言い、即座にその場から姿を消した。
「行ってきます」
そう言って笑顔を見せた後、一番隊隊舎・隊首会場の中へ入っていくを、日番谷は見送った。
無事に戻ってくることを信じて、固く閉じられた巨大な扉の前で待ち続けた。
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「とりあえず現状維持だそうです」
「……とりあえず、か」
「…はい」
の斬魄刀・曼珠沙華は異質。本来であれば、斬魄刀とその持ち主をどこか特別な監視下に置くだろう。
だが、それを行わないのは、三名の隊長が離反し、一名の副隊長が療養という状況だからだ。
今、上位席官が抜けたら今後の状況は更に悪化することは容易に想像できる。
現状維持は、それゆえの特別処理なのだ。だが、状況に合わせてそれも変化する。
いつ、通常とるべき処置に移行されるか分からない。
「本当のこと言うと、怖いです。隊長と離れ離れにされるんじゃないか、そうなったら二度と会えなくなるんじゃないかって」
「そんなこと絶対させねえ」
護ると誓った。に、自分自身に。
今度こそ、を護ってみせる。絶対に。
仕事に復帰する日、はまず十番隊隊士たちのところに足を運んだ。
が入院している間、彼等はの仕事を代わりに行なってくれただけでなく、日替わりで見舞いに来てくれたから。
そのことを日番谷から聞いて、復帰する前に彼等に会ってお礼を言おうと決めていた。
それを実行する日がついにやって来たのだ。
「……はぁ…」
扉の前に立ち、はゆっくりと深呼吸する。
自分を落ち着かせようとするが、鼓動は早まるばかりで、手も少し震えていた。
怖いわけではない。ただ、彼等に会うのは久しぶりだから、ただ単に緊張しているだけだ。
どんな顔をすればいいだろう、何て言えばいいんだろう。
そんなことが頭の中でぐるぐる回っていて、扉を開けることができずにいた。
けれど、
「みんなお前のことを待ってんだ」
の心に響いた声。
それは、日番谷がにかけてくれた優しい言葉。
「私、みんなに迷惑をかけてばかりで、申し訳ないです」
「そんなこと気にしてねぇで、早く体治せ」
「…はい」
「…迷惑だ、なんて誰も思っちゃいねぇよ」
「え?」
「あいつらは自分から進んでお前の仕事を代わりにやってんだ。お前が戻ってきても困らないように自分達が出来ることはないかって、俺や松本に言ってきたんだ。だから、迷惑かけたとか、申し訳ないとか、そんなこと考えるんじゃねぇ」
「…はい」
「みんなお前のことを待ってんだ」
いつだって日番谷はに勇気をくれる。
『大丈夫』
そう自分に言い聞かせて、は目の前の扉を開けた。
「三席!」
「さん!」
の姿を見るや否や、隊士たちは驚きと喜びの声をあげた。
自分を囲む彼等、一人一人には笑顔を返した。
「三席、身体の方は大丈夫なんですか?」
「ご心配おかけしました。もう大丈夫です」
「良かった!でも、無理はしないで下さいね?」
「ありがとう。みんなの気持ち、すごく嬉しい」
自分を大切に思ってくれる仲間がいる。
『ここにいていいんだよ』と言われた気がして、すごく嬉しかった。
今、笑顔でいられるのはみんなのおかげ。
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