上を向いて歩けば眩しいくらいの青い空が広がっていて、自然と笑みがこぼれる。
胸のところに手を当てると、心の中がぽかぽかしているのが分かる。
こんなに穏やかな気持ちになれたのはいつ以来だろう。思い出そうと考えてみたけれど、途中でやめた。
どうでもいいやって思ったから。だって、今すっごく幸せだから。
「…じゃあな、ルキア」
「…ああ」
"さよなら"ではなく"じゃあな"と言ったのはまた会えると信じているから。
現世に、自分の世界に戻る一護に伝えたい気持ちはただ一つ。ルキアはそれをそのまま言葉にする。
「…ありがとう。一護」
今ここにいられるのも、今こうして笑えるのも、全部一護のおかげだから。
心から感謝していることを、言い尽せない程の気持ちを、ちゃんと伝えたかった。本当にありがとう、と。
ルキアとの会話を終えると、一護は穿界門の方へと歩を進めた。
最後に見た一護はとても満足そうな笑顔だった。
言葉数は少なかったけれど、それで十分だということはよく分かった。
二人はとても良い表情をしていたから。
現世へ帰っていった一護たち。
彼等の姿が見えなくなっても、をはじめとする護廷十三隊の死神たちはその場を離れようとはせず、ただ穿界門をじっと見つめていた。あの人が動くまでは…。
「さん、どうして貴女がここにいるのかそろそろ答えていただけますよね?」
その声を聞くや否や、ビクッと硬直するの身体。
ゆっくりと振り返ると、卯ノ花がニッコリと笑みを浮かべていた。
それを見ては心から怖いと思ったのだが、目をそらすことも出来なかった。
は背筋をピンッと伸ばし、苦笑いを浮かべながら卯ノ花の問いに答えた。
「黒崎さん達が現世に帰ると聞いたので……見送りに」
「そうですか。では、今すぐ救護詰所に戻っていただけますよね?見送りは終わったのですから」
「でも!私、もう元気ですし。もう大丈夫…」
「それを判断するのは私です」
「でも…仕事が…」
「さん」
卯ノ花に名前を呼ばれて、は次の言葉を飲み込んだ。
そんなに卯ノ花は、ニッコリと笑みを浮かべた後、先程と同じ言葉を、もう一度言う。
「今すぐ救護詰所に戻っていただけますよね」
「…はい。ごめんなさい……」
そうしては卯ノ花と共に救護詰所に戻っていった。
その様子を見ていた者は皆、の無事を心から祈った。
……ここにいる全員、卯ノ花のことを恐ろしいと思ったのは言うまでもないだろう…。
救護詰所の自分の病室に戻ると、卯ノ花はに薬を渡した。
はじめは表情をこわばらせていたが、素直にそれを飲んだ。
苦いかもしれないと身構えていたのだが、それは杞憂に終わった。
味を感じることなく、は深い眠りについたから。
「はぁ…」
を寝台に寝かせると、卯ノ花は小さく溜め息をついた。
安堵か、それとも疲れなのか、卯ノ花自身分からない。ただ静かにの寝顔を見つめていた。
今まで見たことのないくらい、とても幸せそうな顔だった。
進