そのままの君がいい




そのままの君が好きだから。
そのままの君でいて欲しい。



瀞霊廷が夕焼け色に染まっていく。夕陽は暖かく美しく世界を染めていく。
遠くから鐘の音が聞こえてくる。業務時間が終了したことを瀞霊廷中に知らせている。

「日番谷隊長。本日の業務は終了しました」
「…ああ」

日番谷がそう言うと、十番隊三席・は嬉しそうに立ち上がった。
満面の笑みを浮かべながら日番谷のほうを見つめて、言う。

「よし!甘味屋に行くぞ!冬獅郎!」
「行かねえ。あと、"日番谷隊長"だ」
「今は勤務時間外だろ?それよりも、甘味屋に行くぞ!」

日番谷の中でイライラが募っていく。眉間の皺が深く刻まれ、周りの空気が冷たくなっていく。
だが、それでもは全く動じない。

「行くなら一人で行け。って!人の話を聞け!」
「行くぞ!」

人の話を全く聞かず、は日番谷の腕を掴み、瞬歩で目的地の甘味屋へ向かった。


甘味屋に着くと、はさっそく団子を二人分頼んだ。
日番谷は、あきらめたのか、の隣に大人しく座っている。大きくため息をついているが、は全く気にしていない。
すぐに店の人が団子を持ってきた。は日番谷に手渡し、自分も一口食べる。

「おいしいな!冬獅郎!」
「冬獅郎じゃねえ。"日番谷隊長"だ。何度も同じことを言わせるな」
「今は勤務時間外だ。別にいいだろ?」

そう言うと、は団子をさらに一口。とてもおいしそうに食べている。
日番谷はお茶を一飲みする。依然、眉間の皺は深いままだった。

「前にも言っただろ?勤務時間中は言葉遣いに気をつけるけど、それ以外は普段どおりの自分でいるって。冬獅郎も『構わん』って言ったじゃないか」
「俺は隊長だぞ?名前で呼ぶか?普通」
「他のやつらはどうでもいい。俺がそう呼びたいんだからいいんだよ」

は団子をもう一口。本当に幸せそうに微笑んでいる。
そんなを、呆れたように、少しだけ羨ましそうに、日番谷は見ていた。

「わがままだな。お前」
「素直に生きるのが一番だって。それにさ、疲れるだろ?ずっと隊長でいるのはさ。確かにお前は"十番隊隊長"だけど、"日番谷冬獅郎"としての時間も必要だろ?」

団子を食べ終えると、新しい団子に手を伸ばす。そして、にへらと笑いながら日番谷を見る。

「おいしいな!冬獅郎!」

にそう言われて、日番谷は団子を一口食べた。甘くて優しい味が口の中に広がり、心がほっとする。

「ああ。そうだな」

ようやく日番谷の眉間の皺が無くなった。
そんな日番谷を見て、はもっと幸せそうに微笑んでいた。










今回のテーマは、甘味屋へGO!
隊長は「"日番谷隊長"だ」とよく言われるので、そのネタもプラスαで書いてみました。
"十番隊隊長"としてではなく、"日番谷冬獅郎"として接して欲しいと願っている男の子っぽいヒロインさんでした。 (08.02.26)

[閉じる]