居場所




草冠が起こした今回の事件も、ようやく決着がついた。
だが、まだ全てが終わったわけではなかった。


バンッ!
「馬鹿!!」


鈍い音とともに響いた叫び声。
が、日番谷の頬を思いっきり叩いたのだ。
その光景に誰もが驚いた。
中には自分の目を疑う者もいた。
席も持たない平隊士が隊長――しかも自隊でない隊長――を殴ったのだ。驚かないほうが無理だろう。
しかし、それを咎める者はいなかった。
の気持ちが分かるから、咎めることなんてできなかった。

「なんで一人で背負おうとしたの!?なんで一人で戦おうとしたの!?なんで……」


「なんで私を頼ってくれないの……」


の瞳から溢れる涙。
視界が滲んで、日番谷のことも、何にも見えなくなる。
子供のように泣きじゃくる
それを見て、日番谷は心が痛んだ。
本当は分かっていた。
自分がこんなことをしたら、は絶対泣くと。
分かっていたけれど、そうしなければならなかった。
草冠との過去を断ち切るためには、そうするしかなかったのだ。

「……悪い…」


傷付いてほしくない。いつだって笑ってほしい。
いつだってそう願っていた。
でも、それは全部俺のワガママなんだ。
あいつが大切だから。
あいつの気持ちを無視してた。
俺があいつを傷付けた。


「……ごめん」
そう言って、日番谷はをぎゅっと抱きしめた。
は、日番谷の胸の中で、泣いた。


本当は分かっていた。
自分がこんなこと言っても、日番谷を悲しませるだけだと。
分かっていたけれど、そうしなければならなかった。
独りじゃないことを気付かせるには、そうするしかなかったのだ。


見ているだけだった。
大切な人が傷付いても、見ていることしかできなかった。
もう傷付く姿を見たくない。
だからもっと強くなる。
大切な人を守れるように。
もっと、もっと、強くなる。


「もうどこにも行かないで。冬獅郎の居場所はココでしょう?」
「………ああ」


あの日、日番谷は大切な友達を失った。

『草冠が死んだのは自分のせいだ』
『自分が草冠を殺したんだ』

自分自身を責めた。
そうして、自分の居場所はどこなのか、分からなくなった。
けれど、


「冬獅郎君!」


がいた。
真央霊術院を卒業、護廷十三隊に入隊した
日番谷と草冠と交わした約束を守って、やってきた。
その瞬間ときからの隣が日番谷の居場所になったのだ。



「ただいま。
「おかえり。冬獅郎」










 (09.02.13)

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