友達




いつだって輝いていた。
いつだって頑張っていた。
そんな二人だから悲しくて、切なくて、愛おしかった。



真央霊術院に入学して最初の試験が行われた。
一番は日番谷冬獅郎だった。
それを見た草冠は驚きを隠せなかった。
一番は自分だと思っていたから。
このことを他人が知れば慢っていると思うかもしれないが、事実だから仕方がないと草冠は思う。
一番になる自信があった。そう思えるほど努力していたのだから。

『次は負けない』

そう自分に言い聞かせ、草冠はさらに勉学に励んだ。
だが次も、一番に草冠の名が載ることはなかった。
今までずっと一番だったのに、一番以外になるなんて初めてだった。
草冠にとって日番谷冬獅郎は光のようだった。自分の心に生まれた闇を感じながら、そう思っていた。
そんなある日、草冠は一人の少女と出会った。
少女は、陽だまりのような温かい笑みを浮かべながら、草冠に話しかけてきた。

「私は。よろしくね!草冠宗次郎君!」
「なんで俺の名前を?」
「だって有名人だから。草冠宗次郎君は。あと、日番谷冬獅郎君もね」

日番谷の名を聞いた途端、草冠は胸が痛むのが分かった。
草冠の視線が下へ下へと下がっていく。
そんな草冠を見て、は笑顔を変えずに言う。

「一番じゃないと嫌なの?」
「えっ?」
「気付いていないみたいだけど、草冠宗次郎君が日番谷冬獅郎君を見るとき、すごく悲しい瞳をしてるんだよ?」

の言うとおり、草冠は気付いていなかった。
正確に言えば、気付こうとしていなかった。
自分が日番谷のことをどんな瞳で見ているのか、考えたくもなかったから。
けれど、はさらに続けて言う。

「私ね、試験は好きだけど、成績発表は嫌いなの。だって、それは自分と他の人を比べるものだから。他の人は他の人、自分は自分なのにね」
「自分は自分?」
「うん!私は私。日番谷冬獅郎君は日番谷冬獅郎君」
「俺は……俺だよな」

自分は自分。
それ以上でもそれ以下でもない。

『今、俺は草冠宗次郎としてこの世界にいる。それで十分じゃないか』

そう心から思うことができた。
の言葉を聞いて、草冠はようやく笑うことができた。
そして、ようやく『日番谷冬獅郎』という存在を認めることができた。

「仲良くなれると思うよ。草冠宗次郎君と日番谷冬獅郎君」

そう言うと、はニコッと笑った。
の温かい微笑みを見つめ、草冠も一緒に微笑んだ。


その後、三度目の成績優秀者が発表され、日番谷が一番だった。
いつものように日番谷は窓側に座っていた。
一人ぼんやりと外を眺めていると、

「君が天才少年って噂の日番谷冬獅郎かい?」

草冠が声を掛けてきた。

「なんだよ…お前……」

日番谷は驚いた表情を浮かべながら草冠を見上げる。
すると、草冠はそんな日番谷の前に手を差し出した。

「俺は草冠宗次郎。君と仲良くなりたい!」

突然のことに戸惑いを隠せない日番谷。
だが、日番谷の手を掴み握手する草冠は嬉しそうに笑っている。
そんな二人の様子を遠くから見守っていた
そして、日番谷と草冠のすぐ近くにやってきた。とても楽しそうに、とても嬉しそうに。

「私は。よろしくね!日番谷冬獅郎君!」
「…あぁ、よろしく……」










 (08.07.13)

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