「なんで……なんでお前がそこにいるんだよ!」

雛森を助けにきたら、そこには市丸がいて、死んだはずの藍染がいて、その先には血まみれになった雛森がいて、藍染と対峙しようとしたら、突如あらわれた人物にさえぎられた。
俺の部下で、同期で、親友のによって…。

!」
「…………」

何も言わない
ガラス玉のような瞳で、俺のことを見ている。
そして、


キィンッ


刀と刀が交わる音が響いた。
俺の氷輪丸との曼珠沙華が交わる音だった。 が刀を抜いて、俺も刀を抜いたのだ。

「やめろ!!」
「何故、反撃しないのですか?私は、貴方の敵ですよ?」
「お前は敵じゃねえ!お前は俺の大事な部下だ!」

そう言うと、は驚いたように、何故か少し悲しそうに、俺を見た。
だが、それは一瞬で消えた。

「私は貴方の敵です。敵に情けをかける方ではないと思っていましたが?」
「お前は敵じゃねえ!」
「敵ですよ。だって、私は尸魂界を、貴方を、裏切るんですから」
!」
「しつこい男は嫌われるよ。日番谷君」

突然、藍染が俺との間に入ってきた。
さっきまで、離れた場所にいたはずなのに。
いつの間に移動したのか、俺は全く分からなかった。
は、隠れるように、市丸の少し後ろに立った。

「全てお前の仕業か!藍染!」
「確かに今回の反乱は僕が起こしたことだ。それは認めよう。だけど、彼女は自分の意思で僕の元にやってきたんだよ」
「なんだと!?」
「理解できなかったみたいだね。こう言えば分かるかな?彼女は僕の部下だ。君が僕を敵だと言うのなら、彼女も君の敵ということになる」
「黙れ!!」

斬魄刀を、氷輪丸の柄を握る力が増す。
そして、


「――――卍解、大紅蓮氷輪丸」


氷が俺の身体を覆い、背には巨大な氷翼を負う。同時に周りの温度も一気に下がった。
俺は、目の前の相手を、倒すと決めた敵を、静かに見つめる。

「―――藍染、俺はてめえを…殺す」
「…あまり強い言葉を遣うなよ。弱く見えるぞ」

氷輪丸に霊力をこめて、最大限の力で、藍染へと立ち向かった。
氷輪丸を振り下ろし、藍染の体を貫こうとした、その瞬間。


ドッ


そこに藍染の姿はなかった。
その代わりに、俺の視界は赤く染められた。
色鮮やかなそれは、俺の血、だった。


「…嘘………だろ…」


卍解が崩れていく。
俺は暗闇の中へと落ちていった。
誰かが泣いているような、誰かが俺の名前を呼んでいるような、そんな気がした。










久しぶりのシリアスです。
藍染側についたヒロインさんです。
ずっと前に思い浮かんだ話ですが、ヒロインさんがどうして裏切る道を選んだのかは分かりませんでした。
突拍子のない作品ばかりですみません…。 (08.05.25)

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