伊勢七緒との過ごし方




静霊廷内にある図書館。
業務用の資料はもちろん、幅広い分野の書物が置いてある、読書好きには憩いの場だ。
公私ともに利用する隊士も多く、毎日通う者も少なくない。十番隊・もその一人だった。

「何かオススメの本ない?」
「そうですね…」

この日は八番隊副隊長の伊勢七緒と図書館にやってきた。
二人とも自他共に認める読書好きだ。
互いに時間が合えば図書館へと足を運び、面白い本を紹介しあう、読書友達だ。一冊の本について熱く語り合うこともある。
七緒はしばらく考えた後、

「これはいかがですか?」

山ほどある本棚の中から一冊を選んだ。
は差し出された本を受け取ると、サッと裏表紙のあらすじを読む。あらすじなので簡単な内容しか分からないが、なかなか面白そうだと感じた。は笑みを浮かべて、言う。

「うん、これにする」
「気に入ってもらえてよかったです。その本、私のお気に入りなんです」
「そうなんだ。読むのが楽しみだ」
「読み終わったら感想聞かせてください」
「うん。こちらこそ、ぜひ感想聞いてくださいな」

自分もお気に入りの一冊を返そうと思い手を伸ばすだが、

キーンコーンカーンコーン

昼休み終了を告げる鐘の音が鳴り響いた。
は最大級の溜め息を漏らし、七緒は苦笑いを浮かべる。

「残念。オススメの本はまた今度で」
「次の機会を楽しみにしています」

また今度、次の機会。
それがいつになるか、たちも分からない。唯一分かるのは、それくらい会えなくなっているということ。それでも、

「またね、ナナちゃん」
「はい。また」

と七緒は心の中で思い、自分自身に誓うのだった。
また会おう、と。その日のために頑張ろう、と。



「ただいま戻りましたー。遅くなってすみませーん」
「………」

執務室に戻ると、さっそく自分の仕事に取り掛かった
その様子を見て、日番谷と乱菊は驚きを隠せなかった。
互いに顔を見合わせる。信じられない、と顔で訴えている。
いつものなら、執務室に来るのが多少遅れても気にしないし、自分の席に着いてすぐに仕事をすることはまずない。
ゆえに、『このは本当にか?』と思ってしまったのだ。
一方、二人のそんな熱い視線に全く気付くことなく、筆を走らせる。その口元には、笑みが浮かんでいる。
それを見るや否や、

「たいちょー!偽物ですよ!絶対!間違いありません!」
「…だが、霊圧はアイツのだ」
「そうですけど…。あ!じゃあ、あれです!技術開発局が作った義骸ですよ!」
「そう思うなら確かめてこい」
「嫌ですよ!隊長やってください!」
「…何で俺が…」

コソコソと話す二人。けれど、

「二人とも、聞こえてるぞ。最初から最後まで、全部な」

どちらも自分が思っているよりも大きな声で話していたため、に全部筒抜けだった。
……十番隊は今日も平和だ。










ヒロインさんと七緒ちゃんとの過ごし方でした。

七緒ちゃんの趣味は読書。ということで、ヒロインさんと本の話をさせたかったのですが、上手くまとまらず…。(泣)
こんな形になりましたが、結構気に入ってます。 (10.02.17)

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