は海燕に呼び出された。
『仕事が終わったら十三番隊舎に来て欲しい』と。理由は分からない。
は、とりあえず言われたとおり十三番隊舎に行き、海燕の部屋の扉を開ける。
「何か用?つばめっち」
「そう呼ぶなって言っただろうが!!」
書類を片付けながら、ツッコミをいれる海燕。
完璧なタイミング。見事なツッコミだったが…。
「…………あぁ?」
刹那。の眉間に深々と皺が刻まれる。
かなり低い声。霊圧も上がった。
海燕の声があまりに大きくて、耳をふさいだのだが間に合わなかったのだ。
耳がキンキンして痛い。すごくイライラする。
「何だ!その態度は!?ヒトを呼び出しといて、文句言ってんじゃねえよ!この鳥野郎!!」
「なっ…!?」
「うるせえ!!お前はとっとと南の国に帰れ!!!」
と海燕。階級からすれば副隊長である海燕のほうが上だが、海燕が護廷十三隊に入隊したとき、は十三番隊所属で海燕の上司だった。
つまり、は元・上司で、海燕よりも長く護廷隊にいる大先輩ということで…。
「申し訳ありませんでした…!!」
海燕は深々と頭を下げて謝った。
その前には、が腰に手を当てて踏ん反り返っている。
しばらくの沈黙。
それを先に破ったのは、だった。
言いたいことを言ってすっきりしたらしい。
小さく笑いながら、もう一度海燕に尋ねる。
「それで、私を呼び出した理由は何だ?分かっていると思うが、くだらないことで呼んだのなら……容赦しないぞ?」
にそう言われて、海燕は『怖えぇ!!』と思った。
『逆らったら自分の命はない』と自分自身に言い聞かせた後、海燕は机の中から何かを取り出した。
それは……酒だった。
「お前と酒を飲もうと思って呼んだんだ」
「………はぁ?」
「今晩は最高の月だ。月見酒というのも悪くないだろ?」
「……私は明日も仕事だが?」
「奇遇だな。俺もだ」
「……………」
は大きくため息をついた。
いきなり呼び出されて何かと思ったら、酒に付き合えだと?
他の誰かとやればいいじゃないかと思ったし、言った。
だが、海燕は「みんな都合が悪くてな」と言う。
十三番隊第三席で、海燕の妻である都も、仕事が忙しいらしい。
「飲もうぜ?なあ?」
そう言って、にこっと笑う海燕。相変わらずだなとは思った。
なんだか断るのも面倒くさくなってきた。
結局、海燕と二人で酒を飲むことにした。
十三番隊舎の縁側に移動する。
月を見上げながら酒を飲む二人。
会話は特にない。目の前にある月が、とても美しかったから。言葉なんて必要なかった。
終