十二番隊は技術開発局と併設されているためか、風変わりな隊士が多い。
中でも隊長の涅マユリが一番の奇人と言えるだろう。
他隊の者が十二番隊に近付くことは少なかった。
なぜならマユリに気に入られたら最後、二度と戻れないと言われているからだった。
そのため十二番隊への書類や用事は一部の者に頼むことが多い。
頻繁に頼まれるのは十番隊三席だった。
この日もは大量の書類を抱えて十二番隊へ向かった。
書類を床に置くと、は実験室の扉を叩き、元気に力いっぱい叫んだ。
「失礼しまーす。十番隊三席のでーす。十二番隊隊長で技術開発局局長も兼任している涅マユリこと、マユリんはいらっしゃいますかー?」
しばらくの静寂。
だが、すぐにドスドスと足音が聞こえてきた。
が数歩下がり、両の手で両耳をぎゅっと塞ぐと、
「うるさいヨ!大事な実験の最中だったのに!全く!台無しだヨ!!」
マユリが扉から飛び出てきた。
その後ろからはネムがついてきている。
は書類を抱えるとマユリに見せて言う。
「じゃ、実験を再開する前に事務処理なんていかがですか?マユリん?」
「。その名前で呼ぶなと言ったはずだが?それとも何かネ?君は私を侮辱しているのかネ?」
「すみませーん。間違えましたー」
怒り狂うようにマユリはを睨んでいるのだが、は全く気にしていないようだった。
は相変わらず笑みを浮かべたまま、マユリに言う。
「十番隊の日番谷隊長はこれくらいの書類、あっという間に終わらせちゃうんです。さすが天才児って言われてるだけありますよねー」
「…………」
「マユリ様はそれ以上ですよね?もちろん」
の言葉に、マユリは反応を示した。
鼻で小さく笑った後、
「アハハハハハハ!!」
マユリは声を上げながら笑い出した。
その声は次第に大きくなっていく。
しばらくして、ようやくマユリは笑うことを止めた。
「私を誰だと思っているんだネ?こんな書類に目を通すことなど、私には容易いことなのだヨ!」
そう言うと、マユリは書類に目を通し始めた。
マユリは大量の書類を凄まじい速さで処理していく。
それを見て、は小さく微笑んだ。
『大成功!』
口には出さずに、心の中でそう呟いた。
マユリは、自分自身に自信と誇りを持ち、他人に馬鹿にされるのが嫌いだ。
が十二番隊にいた頃、マユリの自尊心を利用して自分の仕事をマユリにやってもらっていた。
『どちらも全く変わらない』
ネムは、そんな二人を見つめながら、そう心の中で思っていた。
終