草鹿やちるとの過ごし方




!あそぼー!」
「今は無理」
「えぇー!?何でー!?」
「書類が大量に回ってきて、すっごく忙しいから」
「そんなの誰かに押し付けちゃえばいいんだよ!」
「…ほとんどは十一番隊に押し付けられたんだけど?」
「そんなことより!あそぼー!!」
「だから、今は無理だって…」
「…………」

やちるは頬をぷうっと膨らませて、じっとを見た。睨みつけている、といった方が正しいだろう。
それを見て、は小さく溜め息をつき、尋ねる。

「あとでじゃ駄目なの?」

先ほどからは「"今は"無理」と言っている。つまり"もう少し"したら遊ぼう、ということだ。
それが分からないほど、やちるは馬鹿ではないと思っていたのだが…。
やちるは、ぶすっとした表情のままで、言う。

、変わっちゃった。十一番隊にいたときは『忙しいから駄目』なんて言わなかった」
「やちるちゃん…」
「何で嫌いな仕事してるの?何でそんなに我慢してるの?のやりたいことやればいいじゃん」
「…………」
「…あたしは前のの方が好き」

たしかに仕事は嫌いだ。特に事務処理は苦痛でしかない。
長時間椅子に座って大量の書類と格闘しなければならないなんて、外で体を動かすことを好むにとって地獄でしかない。
それは昔も今も変わらない。だが、はそれをしている。大嫌いな事務処理を黙々とこなしている。
たまに「書類届けに行ってきまーす」と言って逃げ出しているが、それでも必ず執務室に戻ってきて、自分に与えられた仕事をする。
投げ出すことは決してしない。けれど、

「たしかに仕事は嫌いだけど、我慢してるわけじゃないよ。自分で考えて、自分で決めて、やってるの」

我慢しているのではない。誰かに強制されているのでもない。
やりたくなくいことでもやるべきことだからやる。それだけだ。
以前の自分なら想像できないだろうが、今はそう考えるようになった。

「…やっぱり変わったね」
「そうだね。こんな私、嫌い?」
「前のは好きだよ。今のも好きだよ。だって、はあたしの友達だもん」

そう言うと、やちるはニコッと笑った。
ようやく笑顔を見ることができて、にも笑みがこぼれる。
好き。友達。どちらも胸の辺りが温かくなる、やさしい言葉。
ずっと手にしていた筆を置き、ぐぃーっと体を伸ばす
やちるの言葉がとても嬉しくて、何かお返しをしたくなった。どうすればいいか、思い浮かぶのは一つだ。

「あともう少しで終わりだけど、やちるちゃんをこれ以上待たせるのは悪いね」
「うん!もう我慢できないよ!」
「で、一つ提案。この書類、十一番隊でやってくれない?あとは簡単なやつだし、電球みたいにツルピカな頭の人とかがやればいいと思うよ」
「そうだね!つるりんに押し付けよう!」
「そうしよう!あ、でも更木には会わないからね」
「えー。剣ちゃん、に会いたがってたよ?」
「会いたいのは死合したいからでしょ?今日はそんなことよりやちるちゃんと遊びたいの」
「しょーがないなー。それじゃ、何して遊ぼっか?」
「うーん。何がいいかなー?」










ヒロインさんとやちるちゃんの過ごし方はこんな感じですね。

仕事を押し付けたり押し付けられたりするけど、とても仲良しな二人です。
最終的には第三者(今回は一角さん)に押し付けて、遊びにいっちゃいます。
まぁ、ヒロインさんが変わったきっかけは、もちろん"彼"の存在です。 (10.03.03)

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