冬獅郎くんへ、
はじめて手紙を書きます。最初で最後の手紙。
本当ならちゃんと声にして言葉にして伝えるべきなんだろうけど、ごめんなさい。
わたしにはとてもそんな勇気がなくて、どうしても冬獅郎くんの目を見て話すことが出来ませんでした。
臆病で、ごめんなさい。手紙でなら素直に言えるなんて、わたしは卑怯かな?
今、わたしの目の前にははじめて冬獅郎くんがくれたプレゼントがあります。
覚えているかな?桃色と緑色の小さなお花が付いた白い髪留め。
お前に似合うと思って。そう言って真っ赤になりながら冬獅郎くんがくれたんだよ。
つけたのは1度だけ。冬獅郎くんが連れて行ってくれた町外れの花火大会の時のたった1回。
似合うよ、って言ってくれたのが嬉しくて、壊すのが怖くなって、特別な時だけにって決めたの。
だけど結局、あの日が最初で最後になっちゃった…。
気がつけばわたしは、いつも冬獅郎くんに甘えて頼ってばかりいたね。
あの日、髪留めと一緒にくれた冬獅郎くんの気持ち。好きだ、って短くて、でも真っ直ぐな言葉。
本当はとても、とても嬉しかったのに、わたしは、わたしも好きだと言ってあげられなかった。
ただ、頷くことしか出来なかった。
いつも、いつも。心は溢れそうなくらい冬獅郎くんを想っていたのに、わたしはそれを言葉にすることが出来なくて、
手を繋いでくれた時も、抱きしめてくれた時も、キス、してくれた時も。
本当はとても、とても愛しいって思ったのに、わたしは冬獅郎くんにその気持ちを伝えられなかった。
ううん、伝えようとしなかった…。
きっと、そんなわたしの臆病なところが冬獅郎くんを不安にさせちゃったんだね。
冬獅郎くんに別れよう、って言われた時、悲しかったけど、辛かったけど
もうこれで冬獅郎くんに悲しそうな顔や無理に笑う顔をさせなくて済むんだって、
これが今までわたしが冬獅郎くんにしてきた事への償いなんだって、
だからこれで良いんだって、そう、思ったの。
ごめんね、ごめんなさい。わかっているの、わたしが悪いって自業自得なんだって。
でも、それでも、今でも。冬獅郎くんを想っています。冬獅郎くんだけを愛しています。
もう頭の中がぐちゃぐちゃで、何を書きたいのかもわかんなくちゃった。
やっぱりわたしは卑怯だね。今さらこんなこと言ったって冬獅郎くんが迷惑なだけなのに、
わかっているのに、止まらないの。今でも溢れてくるの。
好きだよ、
大好き。
あいしてる。
幸せに、なってください。
幸せにしてあげられなくてごめんなさい。
「―――っ…!!」
そこまで読んで、駆け出した。
握り締めた手紙がクシャリと音を立てて潰れる。
けれどそんなこと気にしてなんかいられない。この雨も、この涙も。
「!!!!!」
嗚呼、やっぱり俺には君だけだった。君だけが愛しいんだ。
照れ屋で恥かしがり屋、優しくて純粋で真っ直ぐで―――。
可愛くて仕方ないんだ、愛しくて堪らないんだ、ただ君だけが。
が、だから。ただ、それだけ。
さよならなんて、もう言わないよ。
時々それは、雨色ラブレター
(雨の中、傘もささずに震える小さな君を抱きしめた)
(ごめん、一緒にいて。もう二度と手放したりしないから)