僕のそばにいて




仕事(特に書類整理等のデスクワーク)は、はっきり言って面倒くさい。
護廷隊に入ったときも、隊長になった今でも、変わらない。
それでも真面目に仕事してるのは、性格上サボることができねえのもあるが、一番の理由は早く終わらせて昼寝したいからだ。
流魂街に住んでた頃、ばあちゃんに教えてもらった『寝る子は育つ』を実践している。
だが、格好がつかないので誰にも言ってないが…。
以前は、仕事が山積みで休憩すらできなかった。
サボってばかりの副官の所為だ。
だが、最近は昼寝ができるようになった。
それは全部有能な部下のおかげだ。
そいつの名は
元は四番隊の所属だが、十番隊に異動してきた
事務処理、戦闘能力ともに申し分なく、あっという間に三席になった。
が三席になってから仕事の能率が格段に上がった。
任務に関しては、状況を的確に判断・下位の隊士へ指示を行い、さらに怪我をした者に治療を行うことができるため、任務の成功率・生存率ともに上がった。
デスクワークに関しては、書類提出期限の配分や振り分け等、仕事をする上での舵取り役をが自主的に行っているため、スムーズに仕事を進められるようになった。
は本当に有能な部下だ。
たとえ卯ノ花に「四番隊に戻して欲しい」と言われても、すぐに断るだろう。
たとえ本人が「別の隊に異動したい」と申し出ても、俺はそれを認めないかもしれない。
は十番隊にとって欠かせない存在だ。
それは俺にとっても……。



俺と、二人で仕事をしていた。
松本の姿はない。俺が隊首会から戻ってきたときにはどこにもいなかった。
最初はイライラしていたが、そんな気持ちもどこかに消えてしまった。
俺のすぐそばにがいれば、それでよかった。

「どうぞ」

そう言って、は俺の机に湯のみを置いた。
俺は「さんきゅ」と言って、お茶を口に含む。
少し渋めで、熱い、俺好みのお茶だった。
しばらくしては、俺がお茶を飲み終えるのを見計らい、言う。

「隊長。ちょうど区切りもいいですし、少しお休みになられてはいかがですか?」

ちょうど疲れてきたときには優しい言葉をくれる。
の言うとおり区切りもいいし、少し眠くなってきたので、

「分かった。そうさせてもらう」

それに甘える俺。
それだけで、はニッコリと微笑んだ。
俺は、そんなから目をそらして席を立った。


『やべぇ……』


が可愛いと思った。
そう思ってしまった自分が恥ずかしくて、目をそらした。
なのに、

「隊長?どうしました?」

首を傾げながら尋ねてくる
そんな仕草に胸が苦しくなる俺。
『落ち着け!』と何度も自分に言い聞かせながら、

「何でもねえ。何かあったらすぐに呼べ」

そう言って、隣にある仮眠室に退散した。
扉に背を付けて、ゆっくり深呼吸しながら、小さく呟いた。


「何やってんだ…。俺……」


まだ自分の気持ちに気付いていない頃。
その答えが分かるのは……あともう少し。










一周年記念小説・第二弾ですv
配布終了しました。 (09.02.13)

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